難病と言われる大腸疾患にはどんなものがありますか 難病と言われる大腸疾患にはどんなものがありますか


樋口和秀 先生
樋口和秀 先生
大阪医科大学 内科学第二教室 教授

■ 専門分野:
消化管疾患の病態生理、Helicobacter pylori、内視鏡的治療、カプセル内視鏡

難病と言われる大腸疾患にはどんなものがありますか

腸粘膜が炎症を起こしてただれ、びらんや潰瘍を形成する病気は、一般的に炎症性腸疾患と呼ばれますが、その中でも潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的です。症状は粘血便(ねんけつべん)下痢腹痛などです。20〜30代の若年成人に多く発症しますが、50〜60代の人にもみられます。いったん良くなったように見えても、数ヵ月から数年後に悪化することがあります。
炎症性腸疾患はもともと欧米人に多く日本人には少ないと考えられていましたが、最近、日本でも急速に患者数が増えています。

原因は何か

大腸粘膜に対する異常な免疫反応、つまり、体のなかに異常な抗体ができ、これが自分の大腸粘膜を攻撃することなどが原因とされていますが、遺伝的素因や食生活、腸内細菌叢(そう)の変化などが複雑に絡み合っており、すべてが明らかになっているわけではありません。肉体的、精神的ストレスで悪化することがありますが、原因というよりも誘因と考えられています。

症状は?

血便、粘血便、下痢、腹痛が主な症状です。ひどくなると体重減少貧血発熱がみられます。治療によって改善しても数カ月から数年後に再び悪化し、それを繰り返す場合(再燃緩解(さいねんかんかい)型)や、症状がだらだらとずっと続く場合(慢性持続型)などのタイプに分類されます。

検査方法

診断のためには大腸内視鏡検査や小腸内視鏡検査が必要です。潰瘍性大腸炎の炎症の特徴は、びまん性、連続性と表現され、大腸粘膜の全周にわたる炎症が直腸から連続してみられます。通常の大腸内視鏡検査で診断や治癒経過をみます。最近では、大腸カプセル内視鏡が臨床で使用できるようになりました。潰瘍性大腸炎などの患者さんは、大腸内視鏡自体がなかなかスムーズに行えない場合があり、このような時は、苦痛の少ないカプセル内視鏡で治癒経過をみる場合もあります。一方、クローン病では、大腸だけではなく全消化管に病変が及ぶ場合があります。とくに小腸に病変がよくみられるため小腸検査も必要になります。バルーン付きの小腸内視鏡やバリウムでの小腸透視検査(レントゲン検査)などがあります。いずれも患者さんの負担が大きく、簡単には行えません。この分野においても、小腸用のカプセル内視鏡が使用できます。ただし、小腸の狭窄が疑われる場合、事前にカプセル内視鏡が開通するかどうかを評価するためのカメラのない同サイズのカプセル(パテンシーカプセル)で小腸の通過を確認してから、本当のカプセル内視鏡をすることになります。

※大腸カプセル内視鏡については、以下からご確認ください。