ストレスと大腸疾患 ストレスと大腸疾患

樋口和秀 先生
樋口和秀 先生
大阪医科大学 内科学第二教室 教授

■ 専門分野:
消化管疾患の病態生理、Helicobacter pylori、内視鏡的治療、カプセル内視鏡

ストレスと体調

誰もが経験あることですが、学生時代、中間試験や期末試験の時に食欲がなくなったり、下痢になったり、体調を壊したりしたことを思い出します。一般的に、現代社会はストレス社会ともいわれ、現代人の体調とストレスは密接な関係にあります。総理府が15〜74歳の男女を対象に行った調査によると、「日頃、ストレスを感じている」と答えた人は56.9%で、実に半数以上の人が何らかのストレスを抱えているという結果でした。
ストレスとひと口にいっても、すべてがよくないわけではありません。適度なストレスは、それを乗り越えたときに達成感をもたらしてくれます。また、自信を持つことや成長する糧になることもあります。

ストレスと大腸がん

ストレスが強いと、がんにかかるリスクが高まるということはよく言われます。ラットによる実験でも、ストレスをかけられたラットには、そうでないラットに比べて明らかにがんの発生率は高くなり、同様の現象はヒトにも観察されたという報告があります。その原因の一つは、「免疫力の低下」と考えられています。
さらに、ストレスは飲酒量や喫煙本数の増加、過食など行動面に現れることもあり、このような生活習慣の乱れが生活習慣病の発症や悪化につながることもあります。また、ストレス自体が高血圧や糖尿病のリスクを高めるなど生活習慣病の危険因子としても知られており、これらはすべて大腸がんの発症に関する危険因子になります。

最近急増している「過敏性腸症候群」

過剰なストレスは心身にさまざまな不調をもたらすことがわかっています。とくに胃腸はストレスの影響を受けやすく、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の機能にも異常を来します。腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などをくり返すものを「過敏性腸症候群」といいますが、これはストレスを受けやすい20〜40歳代に多くみられ、過労や睡眠不足、不規則な食生活や不規則な排便などが誘因になることもあります。大腸は精神の影響を受けやすい、きわめてデリケートな臓器であるわけです。

大腸の検査も大切です

過敏性腸症候群も正確には、大腸の検査をして大腸に炎症がないことを確認しなければなりません。下痢や便秘などの症状でも他の大腸の病気があります。大腸内視鏡検査(カプセル内視鏡検査も含めて)は、医師に相談して受けるようにしてください。

ストレスとどう向き合うべきか?

ストレスを上手に解消することが重要です。ストレス解消法の見つけ方は、ストレス解消を目的として探すというよりも、興味のあること、やってみたいことに挑戦して、結果としてストレスが解消されていたというのが理想です。アフターファイブや休日は心を解放して、心身ともにリラックスしてみましょう。また、十分な睡眠と休養、バランスのとれた食事、適度な運動など、規則正しい生活を心がけましょう。

※大腸カプセル内視鏡については、以下からご確認ください。